2016年、SEOやウェブマーケティングの業界で話題になったことと言えばwelq問題でしょう。DeNAが買収したキュレーションメディアであったwelqはSEO対策をこれでもかと施す事によって、様々なキーワードで上位表示を達成しました。しかし、扱いを慎重に行わなければならない健康や命の問題について、間違った情報やエビデンス(証拠・根拠)のない情報を掲載してしまい、多くの専門家からバッシングを受けました。
welq問題については様々な識者の方がネット上で書かれていますから、それらを参照していただければと思います。ここではwelq問題から考えられるウェブライティングの歴史を振り返ってみたいと思います。
ワードサラダと短文時代
ウェブはそもそもテキストを中心に始まったものですので、ウェブライティングの始まりはネット黎明期からと言えるでしょう。ただ、このウェブライティングが外注で行われはじめたのは、ホームページ作成が行われるようになったときからではないでしょうか。
ウェブライティングは当初SOHOの人たちに発注されていました。携帯電話はガラケー、パソコンはWindowsXPかWindows2000といった時代でした。この当初、ウェブライティングはガラケー用のコンテンツとして提供されることが多くありました。例えば携帯小説であったり、情報サイトだったりに使われました。
今現在とそこまで大きく変わりませんが、違いはガラケー向けであることと文字数が100文字200文字という少ないものだということでしょう。ガラケーでは多くの文字を読むのが画面的に難しかったということもあり、短い文章が好まれました。携帯小説などがまさにその典型でしょう。
加えてパソコンで見るものについてはワードサラダが出てきた時代です。様々な単語を混ぜ、プログラムで自動生成したものがワードサラダです。今でもAIを使ったワードサラダがあるようですが、当時は文章の意味が通じないものでも気にせずサイトに使っていました。テキストにキーワードを多く埋め込目ば、たとえ文章の意味が通じなかったとしても、SEO的に有利だったからです。
ただ現在では、ワードサラダについてはGoogleが対策してペナルティを与えるようになりました。そのためワードサラダではなく、ちゃんと意味の通る文章をアウトソーシングして作ってもらっているようです。
アフィリエイトと外部被リンク用ライティング
ガラケーの時代からスマートフォンが登場し、話題に敏感な人達が使い始めていた時代ではアフィリエイトと外部被リンク用のライティングが増えてきました。
アフィリエイトはある商品やサービスをネットで売る、ネットの販売代理店のようなものです。例えば看護師の転職に関する情報を載せているものであったり、ウォーターサーバーの選び方についてだったり…共通の商品やサービスに関するライティングを外部に依頼していました。
ウェブライティングの文字数や内容、キーワード出現率などについてはさほど厳しく言われることはありませんでした。今ほどコンテンツによるSEOと言うのは効果がなかったためです。ですのでそのかわりに被リンクをつけるライティングと言うものもありました。
被リンク・バックリンクはサテライトサイト(被リンク用のサイト)を作成し、そこからリンクすることが主流でした。当時は無料ブログもたくさんありましたので、無料ブログをたくさん作り、そこにキーワードを散りばめた文章を入れてリンクするというパターンです。
文字数で言えば600文字~1000文字程度でOKでしたし、キーワード出現率もある程度キーワードがあればそれでOKという時代でした。
内部対策用コンテンツライティング
そして今現在、welqなどのキュレーションメディアが問題になる時代ではコンテンツラインティングが主流になっています。コンテンツライティングは質・量・関連性を考えたものです。おおよそ3000~5000文字、welqのような大規模サイトになると、10000文字を超えるようなものがメインになっています。
もちろん一人に10,000文字を書いてもらうのは負担が大きいので、2000文字の記事5つを書いてもらい、それを組み合わせることで一つの長い記事にすることに成功しています。だからでしょう、肩こりで背後霊がついているというような文章が出来てしまったのは。
コンテンツの関連性や質も見られていますから、コンテンツにキーワードを5%程度散りばめる必要がありますし、共起語と言われる関連度の高いキーワードを入れることも求められます(例えば「肩こり」というキーワードだと「肩甲骨」とか「首コリ」などは共起語です)。
10,000文字程度の文字数、キーワードの出現率、共起語などを入れてちゃんと読める文章にしているという記事の質、この3つを厳しく見ています。
ウェブライティングにおける金額
ウェブライティングは昔に比べてかなり金額が上がっています。私が知る限りですが、一番低い金額は100文字のライティングで15円というものがありました。10000文字書いて1500円です。
アナログな記事を書いている人、雑誌の連載や新聞コラムであれば、おおよそ400文字で2万円や安くても8000円くらいです。1文字単価で言えば20円ですから、ウェブライティングはかなり安いと言えるでしょう。
ただ、昔はガラケー用であったり被リンク用であったりと、さほど質を気にせずに書かれていた時代に比べて、高くなってきています。100文字20円前後というものはかなり少なくなり、現在では1文字0.5円~1円程度まで上がってきています。それでもアナログな雑誌・新聞などよりは低いですが、それには理由があります。
ライティングしているのは主婦・学生等
雑誌や新聞、最近ではウェブメディアであってもヨッピーさんのようにしっかりとした記事を書くライターの方々はそれなりのお金をもらっています。なぜなら彼らはそれで生計を立てているライターだからです。
しかしウェブライティングをしているライターは違います。主婦だったり学生だったり、お小遣い稼ぎで行っている人が大半を占めます。中にはパソコンではなく、スマホで作った数百文字のテキストコンテンツを電車に乗りながら作って送る、という学生もいるそうです。
つまり今のウェブライティングというのはしっかりとしたライターに頼むほど、記事の質もプロレベルである必要はないのです。だからこそ、安い値段で発注するし、受注する側もプロではなくアマチュアの人が行っているのです。
ウェブライティングの今後
以上、説明させていただいた内容をまとめると次のようになります。
- ガラケー時代は100文字程度、被リンク・アフィリエイト用で500~1000文字、コンテンツ用で3000~10000文字と必要文字数が上がってきた。
- 報酬単価は100文字15円くらいだったものが今では1文字0.5~1円に上がっているが、雑誌・新聞よりもかなり低い。
- ライティングをしている人の多くは本職ライターではなく、主婦や学生などでお小遣い稼ぎとして行っている。
2016年は確実にウェブライティングにとっては一つの転機となった年だと思います。
今後、ウェブライティングはやはり「質重視」で進んでいくとは思います。しかしwelqのように「検索エンジンに評価されるための質を上げる」のではなく「読んでくれるユーザーのために質を上げる」方向にシフトするのではないでしょうか。おそらくGoogleの検索アルゴリズムもよりユーザーが評価する質の高いコンテンツを上位表示するように変わっていくでしょう。
それがいつになるかはわかりません。そしていつの時代も検索エンジンの穴をつくようなSEOはなくならないでしょう。それでも王道を行くことこそ近道であり正解である、とノーセールスは考えています。